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日々徒然、さにわ語り。

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近侍日誌:十一月十七日

※このドキュメントは都合よく現代語訳されています。


十一月十七日  イベント発表の夜 大広間にて


「――おう、皆揃ってるなー」

細く筒状に丸めた紙を片手に、審神者は広間の端から端までをぐるりと見渡した。
一振りくらいは欠けているかと思えばそんなこともなく。隣に立つ薬研も含め五十九振り、全員がこの一部屋に揃っている。綺麗に整列したりはせずにそれぞれがそれぞれ好き勝手に過ごしているが、それも審神者が紙筒でタシンと己が手を打つまでの話だ。
そうして皆の目を集めておいて、審神者はその紙を広げて白板に貼り付ける。
この広間には上座も下座もない。審神者が立つ場所が正面で、皆はそこを起点として集まる。そういう風にいつの間にかなっていた、ある意味この本丸の性格を表す緩やかな流れ。

いち早く集まった者には聴こえただろう。
――ったく、毎度毎度予告で驚かせなきゃ気がすまんのかね。
小さな呟き声。

隣に立つ薬研と、その横顔が見える位置に陣取った者は知っている。
――先の予定まで出せばいい、ってもんじゃないだろ。
愚痴のような言葉でも、確かにくいと弧を描く口元。

貼り付けた紙を、ぱん、と叩き。振り返り。集まった自慢の刀達に向ける目は。
いつかのようにギラリと輝いている。

「さあて、楽しい楽しい今後の予定と! 予算会議のお時間だ!」

なんとなくノリで握り拳をぐっと突き上げれば、ノリのいい何振りかがワァワァと続いて声を上げた。
なにがなんだかわかっていない一番新入りの包丁藤四郎も、わからないなりにわぁー!と手を振った。



1.鍛刀キャンペーン

「まずは明日18日から、小烏丸の鍛刀に挑戦できるようになりまーす」

きゅっと細い赤ペンで日付を丸く囲み、横の空白に「予算」と書き込む。
すぐさまハイと手が上がった。博多藤四郎。

「今度のも500もやったら十分たい」
「まあ、それくらいかねー。ただし絵札は全部使っちゃおうかと思ってます」

なんとなく、視線が薬研に集まる。500枚。絵札全部。

「レシピは……うーん、どうせわし帰ってくるの18時くらいだしね。先人に期待」

レシピおまかせ。書き込まれた文字を一瞥して薬研は苦笑する。

「……あまり期待してくれるなよ、大将」
「二度あることは三度ある?」
「なら、三度はもう過ぎた。小狐丸、数珠丸、大典太、――そもそも、俺がどうとかじゃなく単純に絵札が上手く効いてるだけだろうよ」

かもしれないねぇ、と流しながら、それでも誰に任せるつもりなのかは全員知っている。
わざわざ書き残す必要もないほどに。


2.秘宝の里

「主! 第二回大会!」
「レギュレーション早う!」
「気が早い! 早すぎる! まだ仕様もわからんでしょうが!!」

秘宝の里、の「ひ」の字を口にした途端に盛り上がる刀達。なにせ一年ぶり。今年は正月の連隊戦が終わってからずっと、大阪城か拡充かの繰り返しだったから仕方がないとはいえ。
――里の攻略より先にその後の「遊び」に向かうのは、それにしたって早すぎた。

「えー。小判は前回と同じなら、5万もあれば余裕で足りると思われます。あと小烏丸は確定報酬っぽいので、鍛刀でこなかったらこっちで貰います。細かい仕様は前回と変わる宣言出てるので、第二回大会どうこうという話はそこ確認してからです。以上」

こほんと咳払いを一つしてから、審神者は努めて真面目につらつらと語る。
先ほど盛り上がった一帯はまだ落ち着かない様子だが、言った通りに仕様が不明ではルールもなにも決められないので、そのうちに静かになるだろう。その他、ちらほらと小さく里の説明をする声も聞こえてくる。
なにせ一年。あの里を知らない刀も随分と増えた。

「修行道具はあるのかな?」
「というより次の極の情報が出てきてないんですよね。……脇差なのか、気になるんだけどなぁ」
「修行道具が手に入る可能性は高いと見ている。なにせ時間さえかけりゃ確定だからな。だからそれに合わせて一度か二度、極の追加があってもおかしくはねぇんだが、」
「残りの短刀か脇差か、はたまた意表ついて初期刀に行ったりするか、そのへんはわからんね。ま、のんびり待つとしましょ」

そして、こちらの戦力も極という新たな姿をもって大幅に強化された。
もしもまたあの「禍々しい」敵と戦うことがあるならば。

「――うん、楽しみだねぇ」

今度こそは勝ってみせたいものだ。



3.連隊戦

さて、予定も三つ目となれば大分遠い話だ。予定は未定が口癖のようになっている審神者にとっては、何がどう転んでもおかしくない先の話だ。
それでも、と。
ぐるぐると何重にも丸を重ねて、その一箇所を強調する。

「年末の連隊戦。今年の終わり。三池の二振りの他にもう一振り」

ばん、と叩く。描きたてのインクが手の平に移るかもしれない。そんな些細な問題を気にすることもなく。ただ一つだけを宣言する。

「全力で取りに行く」

だろうねー、と一番長い付き合いの刀が笑って言った。
その為の備え、その為の我々です、と主第一の刀も言った。
そうか、と、一言だけを添えて笑うだけの刀がいた。

「うんうん。やっぱり正月は皆で迎えたいものね」
「――そうだな、去年はそうしてくれたのだったか」

今年を悔いなく終われるように。
来年を楽しく迎えられるように。
ここに集った五十九振り、それぞれ性格は違えども、こういう時の思いは不思議と重なるものだった。



4.ついでに

「あ、それと些細な問題なのですが。ゆるっと募集中なんですが」

一通りの仕事が済んで、さて解散という段になって。審神者がそっと手をあげる。
思い思いに散ろうとしていた刀達が、なんだなんだと目を向ける。

「小烏丸をなんて呼ぼうか決めかねてるので、いい案があったらくださいなー!」


……本当に些細な問題だった。


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