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日々徒然、さにわ語り。

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四月十四日の我が本丸。四年目。


※このドキュメントは都合よく現代語訳されています。



四月十四日。当本丸の審神者就任記念日である。

一年目は審神者から初期刀である加州清光にささやかな驚きを提供し。
二年目は当時顕現していた刀剣男士全振り揃ってお返しをした。
三年目は、残念ながら、当日審神者が本丸に顔を出せないことがわかっていたため、翌日改めて宴会が催された。それでも日付変更ギリギリに本丸に駆け込んだ審神者を迎えたものは少なくはなかったが。

そして四年目。
今年は正月頭から、人(刀)数も増えて手狭になってきた本丸の大改修(主に大広間含む本丸中心部)という一大プロジェクト(審神者談)があり、それがようやく片付いたのが三月の末というありさまだった。
なにせ設計段階から皆の意見を取り入れながらやろうというのだから、始めた当初はあれが欲しいこれも欲しいという希望で毎日白板が埋め尽くされていたものだ。そこから取捨選択をし、時には政府の担当者を招きもして、各設備の利便性や要所の守りまで考えて、きちりと線の引かれた設計図が完成した時にはそれだけで一日宴会が開かれるほどだった。気が緩んだところを飲兵衛達に乗せられた、とも言えなくもないが。
設計さえ出来てしまえば、あとは簡単だ。各々割れ物壊れ物貴重品を庭に出し、それから審神者がぽんと手を叩けばはい出来上がり。この部屋はあちらへ、あの部屋は形が変わってこちらへと移る。形が整えば残りは刀達の仕事だ。ただちに手分けをして、結界が緩んではいないか、うっかり配置間違いや蛇口を捻るとお茶が出るなどの細工をしてはいないかと確認に走る。
そうして最後に庭に避難させた荷物を丁寧に運び入れ、一大イベントたる本丸大改修は幕を閉じたのだった。
――ただ一つの謎を残して。



『四月十四日まで開けるべからず』

大浴場のすぐ隣、設計上はただの壁であったはずの場所に。こんな注意書きがされた扉があった。
それは隠すつもりもなくドンと目立っていたものだから、大改修の打ち上げの場で審神者は全員からあれはなんだまた何かやりましたかと詰め寄られたのだが、「見たまんまです」と返すに留めた。
とにもかくにも四月の十四日、就任記念の例年のやりとりに今年は先手を打たれたのだと、刀達はそれからの二週間をどことなくそわそわと、あるいはうきうきと、もちろん無関心な者もいたけれど、その日が来るのを皆心待ちにしていたのだった。

「それじゃあ、あけますよー!」

四月十四日。当本丸の審神者就任記念日である。
祝いの挨拶をそれぞれに済ませ、宴会になだれ込み酒が入る前にと、件の扉の前に全員が集まっている。
総勢七十七振り、それから審神者が一人こんのすけが一匹。大浴場前の廊下に詰まるには多すぎるので、おそらく後方に居る者には声しか届いていないだろう。岩融に背負われた今剣が皆の頭上から見渡しつつ、せーの、と音頭を取る。審神者と、この向こう側が気になって仕方なかった幾人かが扉を押すと、それは何の抵抗も無くあっさりと開いた。
扉の先は通路のようになっており、壁には棚が備えられている。脱衣所みたいだ、と信濃が言った。
さらに先には鳥居があり、ありゃあ転移用の門だなと薬研は呻った。この時点で嫌な予感がしている。
さあさあどうぞお入りなさいとうきうき笑顔で審神者が門をくぐり。皆もその後に続く。

転移門をくぐると、そこは海でした。

――海、だった。
目に眩しいほどの白い砂浜、眼前に広がる青い海原、寄せては返す波の音。
右を見ても左を見てもそんな景色が続いている。
思わず頭を抱えた初期刀をよそに、陸奥守や浦島、なにより千代金丸の喜びようといったらなかった。日頃ののんびりした様子もどこへやら、うちなーぐちそのままでまくしたてるものだから、何を言っているのかさっぱり伝わらない。ただ嬉しいのだということだけは顔に書いてあった。

「はい、というわけで海です。一応扱いとしては「本丸室内」ということになりますが、海自体は本物持ってきてるらしいので、戻って来る時はちゃんと砂落として、あと塩っ気もお風呂で洗い流すこと」

なるほど二十四節気の庭の応用ですねと白山が頷き。長義はその隣で深々と溜息を吐いた。
今回に限った話ではないが、この本丸の政府担当は緩すぎはしないかと。
きっと本丸改修の打ち合わせの際、審神者と二人でこっそりとこの海を仕込んでいたに違いない。
そうこうする内にも審神者の説明は続く。
門を抜けたこの場所がリスポーンポイントになっているので、遠くに流され過ぎた時や溺れた時も安心設計です。一応「室内」なので果てはあり、マップ端まで行くと反対側に抜ける例のアレ仕様です。見ての通り現状砂浜くらいしかないので、なにか設置したいものがあれば白板まで。
相変わらず雅さの欠片もない、と歌仙が嘆けば、これからそう仕込むのが腕の見せ所よと小烏丸が笑う。
釣りができる岩場が欲しいな、大きな船も欲しい、あれもこれもと皆思い思いに口にするのを、パンと手を叩いて加州がまとめた。

「それじゃあひとまず、今日の宴会はここでやろっか。――主、花火なんかも用意できる?」
「おうよ、どーんと派手にやりますか!」

かくて季節外れの花火がどーんと盛大に打ち上がり。
就任四周年の夜も騒がしく更けていくのだった。

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